2枚のポスター
病院に持って行ったMP3を整理してて思いだした。
学生の頃、月に1回売れなかったポスターを、無料であげるよと言ってくれたレコード屋さんがあった。洋楽のポスターばかりで同級生は見向きもしなかったけど、どっちも好きな私はいいのかしらと思いつつ、好きなバンドのポスターがあったら貰いたいと思ってた。
最初に持ち帰ったのはキッスのポスター。音楽も好きだったけど好きなことしてる感じも好きだった。ジーンが舌を出していてブーツにどくろが似合ってた。他のメンバーもそれぞれ楽しそうで、机の横に貼っておいたのだけど学校から帰ったら無くなっていた。母曰く、気持ち悪い。まーね、趣味じゃなきゃそう思うかもな。
次に持ち帰ったのはスティング。当時、まだポリスだったのか、スティングとして活動してたのかは覚えてない。
そのポスターが美しすぎた。灰色のコンクリートの建物、その屋上でロングコートを着てこちらに背を向けたスティング。少し顔が横を向いてて辛うじて彼とわかる。白い雪が舞うモノトーンのポスターは、雪と大人の男性という憧れをぎゅっとまとめた1枚に見えた。
まさかねと思いながら学校から帰ってきたらやはりない。あんのやろーと思って母の部屋に行ったらそこに飾られていた。キッスは生ごみを包んでゴミ箱の中にあったのに、スティングは一番いい場所に飾られていて、この差よと思った。母の正直さにも笑った。わかりやすい人はいい。裏を考えなくて済む。